伊勢の大王崎灯台で絵を描く
絵を教わていた牛村先生から伊勢の大王崎の灯台に皆と絵を描きにいかないか、と誘われた。一緒に行っても良いが、それよりも自由な方が良いので、近鉄特急の終点に近い鵜方から英虞湾を見て絵を描こうと思った。しかし行って見たらジャングルのようなところで見通しが効かない、残念ながら英虞湾を絵を画けるところはなかった。すぐに引き返す。その点、大王崎には「絵描きが絵を描く場所」という名の銅像迄あった。
しかし決められた場所から描くのはあまり面白くない。ぐるっと灯台を回ってみたら、やはり正面は入り口と階段がある東側だと分かった。しかし残念なことに壁面がコンクリート塗り固められていた。土砂崩れを防ぐためだろうが不自然だ。せっかくなので下書きだけをして家で描く。
鳥羽へと向かう。鳥羽駅前の国際ホテルからの景色がよさそうだ、そこへの非常階段も付いているので上に上がつて鳥羽港を撮る。神島に着くのは2時40分で帰りは三時半が最終だ。これではゆっくり出来ない。途中で後ろに伊良湖岬が見えた。伊良湖岬から帰る船はあるらしい。
しかし伊良湖岬に行く船の時間が不定期らしくて誰に聞いても良く分からない。
神島の漁協で聞いても“今日はどうか分からないが多分あるだろう”と言う。さっき降りた人が四時の船で帰ると言っていた、と言う人もいた。それを信じて駆け出す。途中で港にトラックから降りたおばさんに聞くと四時20分だとはっきり言う。安心して回ることにする。
ここは三島幸夫の小説「潮騒」の舞台になった島である。灯台でのあいびきや、島を泳いで回る場面があり、多くの日本人にこの島をピーアールした。私は二年前の五月の初めに來ているので絵になるポイントは分かっている。急いではいるが前回落ち着いて撮れなかったポイントに向かう。空気が澄んでいるため伊良湖岬も目の前に見える。港で400円の佃煮を二つ買う。タコを買えと言われたが分けのわからぬものを買うと叱られるので止める。