フォーラムの講演司会の仕事が終わると、衣装を着替え、背広と靴は信濃町の郵便局から高槻の家宛に送り、登山スタイルに変える。新宿西口から中央高速で小淵沢まで二時間で2500円だ。これだとJRのあずさ特急などに乗る必要はない。
降りたら風が強かった。今日の泊まりは八つケ岳ポニーというユースだ。そこのご主人が小淵沢ICまで迎えにきてくれていた。昨日までは荒れた天気でそれまでは雪も全く無かったが2日間で雪も積ったそうだ。駅の近くの高速の入り口あたりから南アルプスも八ケ岳も見えるし明日はきっと富士山も見えると言ってくれた。泊まりは私だけなので近くの温泉に送っていって迎えに行ってもよいと言つてくれる。この仕事は定年後に始めたそうだ。ご自分のペースでやっているようで好感が持てた。
翌朝食事は八時だと言うが始発の清里行きが7時50分だ。私は日の出が七時なので、山が染まるのを撮りたいので、と言って朝食を断る。出たのは六時半だつたがまだ暗かった。近くの牧場の人が起きて馬の世話をしていた。入って聞くと、競技場の小高いところからならよく見えると教えられる。なるほどよく見えるところに土を盛り上げてある。そこから甲斐駒ヶ岳と富士山が見えた。しかし富士山は写真のするほどではない。そこから道の駅を通ってさらに上に行った。そのため7時50分の清里方面の小海線の電車には乗れそうもなくなりヒッチハイクで車を止める。停まってくれた人は仕事現場がすぐそこで他所から来ているので、この辺は知らないと言う。申し訳ないので断る。ところが又引き返してきて送ってやると言ってくれる。その人も知らないので駅が見えるところで降ろしてもらう。そのあたりからも写真を何枚か撮る。子供達が登校中で、駅にはどうやって行くのかと聞くと、下にもう電車も停まっていると言う。しかし、そこに行くにはトンネルを越えてぐるっと回らないといけないらしい。間に合わないので線路に下りてホームまで走る。汗をかいてホームによじ登る。この絵はユースを出て甲斐駒ヶ岳の見える駅の方に降りて行ったところだ。
駒ケ根の紹介の地図で見ると南アルプスの右上に小淵沢があり八が岳があるのが分かる。車窓から見た八つケ岳ば実に美しいので清里で降りる。たまたま通りがかりの車をとめると“どこに行きたいのだ”、と言うのでスキー場だというと、自分はスキーの指導員でこれからそこに行くので乗せてあげる、と言ってくれた。ラッキーだった。
着いたらゲレンデのリフトは九時からで、まだ動いていない。九時になるのを待ち800円払いリフトで上まで上がる。本当は歩き客は乗せないらしいがインフォメーションセンターの許可を得て歩く。登山道は氷が張っていて歩きにくい。下まで歩いて降りて食堂に行くと八つケ岳ラーメンがうまそうだったが10時にならぬと食券を売る機械が動かないらしい。10時まで待ってラーメンとライスを食べる。非常にうまかった。
スキー場から下に下るが余り車が來ない。やっと来た人に「美しの森」というのを聞いたら、すぐ近くにあった。そこには展望台があり登って来た人に聞くと、ここからは富士山をはじめ日本百名山のうち10が見えるらしい。実に絶景で富士山は霞んでいるが正面に大きく見えた。いくらでも写真を撮りたくなる。先ほどのスキーの指導員の話では「美しの森」から山を巻いて行くと谷がありシカしかいないが日本離れした景色だといっていたので歩き始めるが山道は通行止めになっていた。
自動車道に出て車をとめると地元の女性だった。隣の大泉の駅に近いところで夫婦で長崎ちゃんぽんとペンションをやっているという。店の名前がポレポレだというので、それでは岩合さん(動物写真家・最近は猫で有名)と関係があるのかと聞くと近くに岩合さんの家があるらしい。これから店の準備で帰るところらしいが岩合さんの話やアラスカの写真家・星野道夫さんの話をしていたら自分の好きな場所に案内しようと言ってくれて、ご主人には携帯から“今、ハイジャックされた!ついては近辺を案内する”と連絡していた。最初に牧場に行き、それから吐龍(どんりゅう)の滝に案内してもらった。車を降りて15分ほど走る。岩の間から竜がくねる感じで流れていて大きくは無いがツララが垂れ下がりよい雰囲気だ。そこから広い渓谷越しに八つケ岳の見える場所に連れて行ってもらう。この人には何枚かの写真と「伝説の湖」の主人公、三橋節子さんを紹介した新日曜美術館のビデオを送る約束をする。
電車に乗って小淵沢に戻って中央線で富士見駅に行く。ここには昔の日本があるということだがバスが走っていない。歩いて景色の良いとこを探すが登りがしんどいのでヒッチハイクで女性に乗せてもらい釜無し川の巨大な橋の近くまで載せてもらう。そこからの八つケ岳はきれいだ。ここから引き返すつもりだった。実は茅野から阪急バスで高槻に帰るため、四時の予約を入れていたのだ。茅野は富士見から二つ先の駅だ。しかしいまから駅に戻るるのはバカバカシイ。きっと茅野行きのでバスが何処かから出ていると思い歩き始める。又ヒッチハイクをして乗せてもらうが、その人も牧場を探しているところらしい。慌てることも無いのでバス停のあるところまで行きましょう、ということでいっしょに探す。原村まできてしまう。
そこで八つケ岳を撮り、バスに乗るがまだ茅野には早すぎる。もう一度途中下車して茅野に着くと9体はくたくただ。四時前だが、一台バスを遅らせれば茅野が八が岳が全部見えるのはうちだけだと、売り物にしてどこに行けば見えるか、と聞くと、市役所の最上階だと言う。言って見たが、少しも美しい景色ではない。一つ一つの山に名前を書いた写真もあるが、だめだ。観光経協会に自転車を貸してくれというと、置いていないと言う。しかし外に一台誰のかわからないが置いてある。あれは貸さないのかもと聞くと、ずっと前からあって誰のかわからないと言う。色々職員のつてで探してかしても良いと言うことになり、どこに行けばよいかというと、一人だけ女性が、線路沿いに10分ほど走って川沿いに20分行けば赤い橋がある。そのあたりは良いのではないかという。飛んでいくとそれらしいところがあった。来てよかった。飛んで帰りバスに乗る。バスは5200円で高槻高速までいける。そして歩いて家まで帰る。家に着いたのに九時半だ。今回はヒッチハイクをしまくり10人ほどの人に世話になった。これをしなければこれだけ色んな角度で八ケ岳を一日で見るのは不可能だろう。中央道を車で走った、というのとはわけが違う。